国民民主党・新緑風会の礒﨑哲史です。
 会派を代表し、ただいま議題となりました令和四年度総予算三案に賛成の立場から討論を行います。
 二月二十二日、衆議院本会議での採決時に我が党の玉木代表が申し上げた通り、本予算案は私たち国民民主党が目指す姿に比べれば、百点満点と言えるものではありませんでした。そこで、国民民主党は衆議院において、賃上げ税制の拡充や教育国債の発行による教育予算の倍増、トリガー条項の凍結解除などを柱とする組替え動議を提出しました。
 この組替え動議は賛同されなかったものの、しかし我々は大局的に観て、以下の理由から政府予算案に賛成することを党として決定しました。

 第一に、長引くコロナ禍による暮らしや経済への重大な影響への対策として、予算の早期成立が求められていること。
 第二に、賃上げや人づくりを重視する姿勢は、国民民主党が先の衆院選から掲げ続けている「給料が上がる経済の実現」、「人づくりこそ国づくり」の方向性に沿ったものであること。
 そして、その際に第三の理由として掲げた「トリガー条項の凍結解除によるガソリン代値下げを検討する」としていたことについても、その後の協議や参議院での審議などを経て、実務者協議が始まることとなりました。早急なトリガー条項の凍結解除に加えて、重油や灯油、これまで対象になってこなかった航空燃料なども含めて、燃料の価格抑制策を原油価格が一定程度下がるまで実施し続けることを改めて要望します。

 コロナだけでも社会経済に計り知れない影響が及んでいる中、ロシアのウクライナへの侵攻による情勢の緊迫化、混迷が原油価格をはじめとした物価上昇などをもたらしていることが加わって、国民生活がさらに圧迫されています。そうした非常事態とも言える状況が続き、先行きが見通せない状況にあるからこそ、今回の当初予算案への野党による賛成が異例の出来事と評されても、我々国民民主党は、国民生活と経済にとってベストな答えを見出すべく、政府与党と交渉し、一定の結果を出すことができたと考えています。
 与野党だからといって常に対立点を探るのではなく、徹底した議論の上に、国民にとってベストと言える結論を得ることが改革中道の政治姿勢であり、コロナ禍の中、今も苦労が続く国民の生活を思い、考え抜いた判断です。国民民主党は、引き続き「対決より解決」、「政策先導型」の政治スタイルで機動的、建設的に政策提案をしていきたいと思います。

 その意味で、衆議院でも指摘した通り、政府予算案には不十分と考える点があることから、ここ参議院でも改めて我々の政策提案をさせていただきます。
 特に、私たちが重視している「人づくりこそ国づくり」、いわゆる人への投資については、岸田総理は所信表明演説で「少なくとも倍増させる」と述べながら、当初予算案の文教及び科学振興費は増えていません。総理が言及されているように、「資本主義における付加価値の源泉は、創意工夫や新しいアイデアを生み出す『人的資本』にある」というのはその通りです。これまでの規模をベースに、毎年微増か横ばいの予算配分を続けていては、付加価値を生み出す前に経済がシュリンクしてしまいます。人への投資による「新しい資本主義」を本気で目指すのであれば、政策の大転換が必要であり、そのためには教育・科学技術予算を抜本的に引き上げなくてはなりません。
 私たち国民民主党は、「教育国債」の発行により、教育、科学技術予算を現行の5兆円から10兆円へ文字通り「倍増」させ、少なくとも10年間継続することを訴えていますので、政府の政策に取り込んでいただきたいと改めて要望します。

 経済財政政策に関しては、国民民主党は、すでに参議院に提出した「給料が上がる経済実現法案」と題した税制改正法案の中で、赤字企業にも賃上げインセンティブを提供できるよう、法人事業税、固定資産税、消費税を軽減措置の対象税目にしています。政府の税制改正法案の法人税減税による賃上げ促進では、法人税を払うことができる黒字企業しか恩恵を受けることができないからです。さらに政府案では、中小企業の控除要件を「全雇用者の」給与総額を1.5%以上増加させた場合とし、大企業の「継続雇用者」と比べ、その対象を違えています。これでは、雇用者が増えて給与総額は増えても、従業員一人ひとりの給料が上がることには直結しません。
 これらの課題が、これまでの賃上げ税制の結果が思わしくないことの主な理由となっていると思われることから、軽減措置の対象税目と控除要件について、国民民主党案を是非呑んでいただきたいと思います。

 加えて、デジタル化、脱炭素化を新たな資本主義の市場のメインストリームにしていくために、投資額以上の控除を可能にするハイパー償却税制の導入や10%から5%への消費税減税、低所得者・中堅所得者の所得を上げるための給付付き税額控除の導入、課税根拠が失われている自動車重量税の当分の間税率分を廃止することなどにより、供給、需要の両面から経済を活性化させ、ひいては給料が上がるための環境を整えていく。これらの政策を実施することを求めます。
 財源については、教育・科学技術予算に対しては「教育国債」を、思い切った財政政策には日銀保有国債の一部永久国債化などで捻出するなどして確保し、対応すべきものと考えます。

 ここまで、給料が低迷する経済を給料が上がる経済に転換させ、安心の国民生活を実現させるために、積極財政による政策をできるだけ早く実施することの重要性を中心に述べてきました。
 しかし、事態の変化のスピードはますます速くなってきており、今提案した政策の中身も、変化に伴ってリバイスが必要になってきます。また、これまでの財政、金融といった従来型の政策に加え、広く世界を見渡すと、経済安全保障、国際標準化といった新たな政策の重要性が、我々が考えている以上に増してきていると認識します。
 最後になりますが、国民民主党は、これからも永田町の前例にとらわれず、「対決より解決」の姿勢で政策本位の行動を続けてまいりますことを申し上げ、討論と致します。
 ありがとうございました。

投資にまで繋がる
国際標準の重要性

礒﨑議員:総理は経済政策に関して、「官と民との協働で成長エンジンを作ることが大事」と発言されている。私はルールメイキングがこれからの成長エンジンになり得ると考えている。国際的なルールが色々なところに作られており(図1)、Suica(Felica方式)、WiFi、CO2排出量の計算方法なども標準化されている。三十年ほど前、日本の洗濯機がイギリスの提案した規格に合わないため東南アジアで販売できなかったように、時にルールは、相手企業を市場から締め出す武器になっている。欧州はルール作りに長けていて、アメリカは強大な市場で標準化することに長けている。そのような中で、経産省が最近ルール形成に関する国内市場の調査分析をしたそうだが、どのような問題意識で調査したのか。

萩生田経済産業大臣:市場創出や獲得のためには研究開発やマーケティングだけでなく、ルールや世論形成に向けた取り組みが必要である。日本企業の多くはその経験、ノウハウに乏しく、苦手としているため、そこを支援する事業者の役割が重要と考えて調査した。欧米と比べると日本は市場も事業者も小規模なので、今後は、ルールや世論の形成のノウハウを持つ事業者の発掘、育成などを検討したい。
礒﨑議員:ヨーロッパはコンサルティング業が積極的にルール作りを促進して、市場規模は数百倍の違いがあると思う。物ベースの規格だけではなく、経済全体に視野を広げて見ると、ルールメイキングは「国際条約」の時点から始まっている(図2)。例えば、CO2削減ではCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)の京都議定書やパリ協定などの段階でルールが作られ、次に国際標準のルールブックが作られる。環境に取り組む企業が情報開示をルール化すると、それが企業の格付や投資にも連動していく。

標準化戦略の全体を
見渡せる組織が必要

礒﨑議員:昨年の骨太方針に「標準化の取組」とあるが、もっと上位概念に位置づけ、政府全体でルールメイキングに取り組んでいくべきであり、専門の大臣を設けるべきではないか。
小林経済安全保障担当大臣:今年二月にEUは標準化戦略を公表し、昨年の十月、中国の国家標準化発展綱要が報じられ、海外では標準化に対する意識が確実に高まっている。我が国も国際的なルール作りに率先して取り組む必要があり、その前提として標準化に値する物やサービスを生み出すこと、その国内法などのルールを整備することが重要。
岸田内閣総理大臣:近年、グローバルなサプライチェーンの脆弱性や、国家、地域間の相互依存リスクが顕在化しており、安全保障の観点も踏まえ、ルールに基づく国際経済秩序の強化を図っていく必要がある。自由で公正な経済秩序の拡大に向けた国際的取り組みを主導していくとともに、経済安全保障への対応について、国際ルール作りを含め、政府一丸となって進めていきたい。ルール形成の担当大臣は、ひとつのアイデアだと思うが、自動車、金融、医療もあれば食品もあるので、一人で担当するのは難しい。
礒﨑議員:欧州委員会は新たな標準化戦略を打ち出し、欧州を更に強くすることを第一に、自分たちに有利な「自由と公正」を目指している。一人の大臣が全分野を見られないのはその通りだが、全体像を描くために全体を見渡せるポジションや組織体が必要だということを問題提起している。新しい経済政策の三本の矢として金融政策と財政政策に加えて、国際ルール形成政策を打ち立ててはどうか。
岸田内閣総理大臣:岸田政権においては、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を、官と民が連携して社会課題の解決を成長のエンジンに転換し、持続可能な成長を目指すことで経済政策を考えていきたい。
礒﨑議員:「民間投資を喚起する」と言われたが、先ほどの図2には投資の構図の中にルールが入っている。国内は、税制改正などで投資を喚起することはできても、ルール作りに参入しないと世界の投資は日本に目が向かないと思う。これからのマーケットの中で、日本企業が成長し国益をしっかりと積み上げることができるかどうかの分岐点に来ている。この分野で立ち遅れると、「商品で勝って商売で負ける」構図は変わらないので、是非、危機感を共有させていただきたい。

国際標準、ルール形成の重要性について大臣達はまだ危機感が薄いようですが、グローバル競争において、その領域で主導権を発揮していけるかどうかが日本企業や国益を守っていく上でのカギになると確信しています。民間の積極的な取り組みは勿論ですが、政府としても主導的、戦略的に取り組んでいく必要があることを、引き続き訴え続けます。是非注目してください。

参議院議員通常選挙を終えて
 参議院選挙を通じ多くの方々に国民民主党を支えて頂き、比例代表では自動車総連顧問である同僚の浜口誠議員が再選を果たすことができました。この間のご理解とご協力、最後までのご支援に心から感謝申し上げます。一方、現職議員2名の落選は痛恨の極みであり、党としての実力不足を痛感する結果となりました。
 また選挙期間中、凶弾に倒れた安倍元首相のご冥福を衷心よりお祈り申し上げます。どの様な理由であってもテロ行為は許されません。私たちは今後も徹底した議論の上で答えを見出す「対決より解決」の姿勢で政治と向き合い、働く者・生活者目線の立ち位置を堅持し、政策の実現に全力で取り組んで参ります。

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 また選挙期間中、凶弾に倒れた安倍元首相のご冥福を衷心よりお祈り申し上げます。どの様な理由であってもテロ行為は許されません。私たちは今後も徹底した議論の上で答えを見出す「対決より解決」の姿勢で政治と向き合い、働く者・生活者目線の立ち位置を堅持し、政策の実現に全力で取り組んで参ります。